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そちら側には立てない

 たくさんの人が別れを惜しんで泣いていた中で、私は泣かなかった最後の定期演奏会の日。打ち上げが終わった帰り道、一人で考えたことは鮮明に覚えているのです。
 「この日のことをいずれ私は後悔するのだろうか?」
 そう思うくらいには、感情を爆発させて別れを実感したほうがよかったのかなと思っていたのだろう。

 後悔していないよ、と伝えたいです。あのとき、あの問いかけをした瞬間、私は無意識に全部捨てていたから。失ったものに未練を残さず、全部捨てて過去にすることだけはたぶん誰にも負けないくらい得意だ。人に勝てることなんてないと思っていたけど、これだけは誇れるだろうと思うくらいに。何を失っても誰を失っても、あたしはこれからもそうして生きていくのだろう。そして失ったものに触れた時、自分はこの手に何一つ残していないことに気づいて苦笑するんだ。

 スポットライトに照らされる先輩達の抱えた感情を、私もあの頃のみんなと共有したいと思うことは、ついに一度もなかった。そのことを知ったら誰か、殴り飛ばしてくれるかな。あの頃の自分へ。そんなにやさしいひとは、すぐ傍にいましたか?